ファイアーエムブレム外伝 研究所

FIRE EMBLEM  Side-story

第三の男・ギース

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第三の男・ギース
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ソフィア崩壊

「村の外へは行くな。最近はこの辺にも山賊がうろついてるからな。」 by マイセン
「ギースの海賊や魔物達が出没して、お前を襲うかも知れぬぞ。」 by ノーマ
「ソフィアを荒らし回っている山賊や海賊は、全てギースの部下なのです。」 by 山の村人


 物語の序盤から中盤にかけて、各地の人々の口から頻繁に語られる、ギース率いる盗賊達の恐怖。ソフィア王国が長引く内乱により統制力を失ったことを背景として、砂漠の果てに自らの一大王国を作り上げた男・ギース。
 たかが盗賊と侮ることなかれ。彼の築き上げた勢力は、プレイヤーの想像を超えるほどに強大だった。

 
危うしラムの村
 始まりの地「ラムの村」を出発した時、「ラムの林」にて全プレイヤーが最初に戦うことになる敵「盗賊」。しかしこの盗賊がギースの手下であること意識しているプレイヤーは、果たしてどれほどいただろうか。
 平和に見えるラムの村だが、ギースの脅威はすぐそこまで迫っていた。以下の図は、ゲーム開始時におけるリゲル(赤)・ソフィア(青)・ギース(黄)の勢力図。

ゲーム開始時(アカネイア暦606年)の勢力分布

 いかがだろうか。ギース王国の版図に、改めて驚く人が多いことと思う。精強をもってなる騎士団と教団が目を光らせるリゲル帝国領においては、盗賊達の目立った動きは無い。しかしソフィア領内においては、紛れもなくこれが現実。さすがに「南の砦」以北はソフィアの正規軍が押さえているものの、南部ラム地方はギースの支配下にあり、ラムの村は完全に孤立している事が分かる。村への情報伝達速度が異常なまでに遅い原因は、実はここにあった。
 中央との連絡を絶たれてもなお盗賊達からの侵略を退け、村が自治を保つことが出来たのは、ひとえに聖騎士マイセンの存在によるものだろう。

 
大海賊時代
 次は視点を海に転じてみると、そこはさらに深刻な事態となっている。セリカ達がミラ神殿を目指し、ノーヴァ島を出港した後に海上で戦っていた相手は海賊。そう、彼らもまたギースの部下であり、海賊島を中心としてギースの海賊達はソフィア海を我が物顔で跋扈していた。
 これはすなわち、ソフィアの制海権も既にギースの手に落ちていたことを意味する。エストが捕まったのは決してただ運が悪かったわけではなく、こういった理由があったということだ。ラム地方で暴れ回っている盗賊達も、あるいは海路から上陸した可能性も考えられる。
 物語開始時点において、海でソフィア王国の管理下にあるのは「海のほこら」と「ノーヴァ島」。しかし海のほこらはDゾンビが棲み付いて以降、実質的に棄島状態となっている。一方で、ノーヴァ島がラムの村と同様に孤立しながらも平穏を保っているのは、やはりノーマ教皇の威光による所が大きい。
 
砂漠の盗賊王
 そして王国の拠点があるソフィア東部は、もはや完全にギースの勢力下にある。その影響力は砂漠地帯だけにとどまらない。「山の村」では本国で使役する奴隷として、若者が日常的に攫われている。また「ソフィアの海岸」でも、今度はパオラとカチュアがギースの部下によって窮地に立たされた。行く先々で盗賊に襲われるこの国の現状について、異国の三姉妹の目にはどう映ったことだろう。
 「ミラ神殿」だけはリゲル帝国が押さえているが、神殿のシスターが証言していた通り、内部はギースの手下共が度々荒らし回っていた。現に、リプリカ(セリカの母)のサークレットを持っていたシスターは、ギースの砦に連れ去られている。
 ミラ神殿の統治を任されていたのは、ドーマ教団の祈祷師ミカエラ。セリカ達が神殿に攻め寄せた時は頑強に抵抗していたが、治安維持に関しては余り力を割いていなかったことが窺える。
 以上の事から、ミラ神殿もまた事実上ギースの手に落ちていたと言っても過言ではない。
 
世に盗人の種は尽きまじ
 本作のストーリー上、ソフィアとリゲル両国の戦いがメインとなっているため、実はもう1つ国が存在していたことは意外と忘れがち。しかし上述してきた通り、少なくとも物語が始まった時、ソフィア王国の約半分はギースが実効支配していた。
 しかし結局ギースの死によって王国は滅び去り、一代限りの栄華に終わっている。ところが、ギースがソフィア王国から切り取った領地(東部砂漠地帯)にはジェシーが入り、新たな王国を建国した事が後日談で明らかとなる。ソフィアとリゲルはアルムによって統一され、バレンシア聖王国が建国された一方で、旧ギース領だけはジェシーの自治に任せたということだ。
 これは取りも直さず、ギースの作り変えた土地柄や風土が、もはやバレンシア一般のものとはそぐわなくなり、新王国に組み込むことは困難だとアルムが判断したからに他ならない。

 建国から短期間の内に、それほどまでに自領の空気を変えてしまったギースは、やはりタダ者ではなかったようだ。
 

記:2008年4月10日